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column105 エアコンつけっぱ? 2023.07.14

エアコンはつけっぱなしが省エネ?

猛暑に向かう季節、気になるのが、『エアコンはつけっぱなしの方が電気代が安い』と言う逆説的意見。
本当でしょうか?

エアコンでエネルギー消費が多くなるのが、スイッチを入れてから設定温度になるまでの初動電力量と言われます。
室温34度の空間を28度に冷やす電力は、なるほどそれなりの電力を使いそう。
「つけっぱなしが安い」説は、一旦、室温を設定温度まで下げれば、あとは温度を維持するための低電力運転で済むので、頻繁にon/offを繰り返して初動電力を何度も使うより消費電力が少ない、と言う考え方です。
この説に大いに影響があるのが、建物の断熱気密性能。
完璧な断熱気密=外気温が侵入してこない環境なら、一旦、室内を設定度まで冷やせば、その後に設定温度を保つエネルギーはほぼゼロ。
断熱性能の極めて高い建物なら、エアコンつけっぱ説は正解です。

断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6なら◎

実際は、家のあらゆる隙間から屋外の高い外気温が侵入します。
熱は高いところから低いところに移動する性質があるからです。
断熱性能の低い家では、換気扇や屋根、壁、床、そして窓から、どんどん外気が侵入しているのです。
特に夏の温度は、70%以上が窓から侵入すると言われます。
「つけっぱなしが安い」説に説得力があるのは、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費基準6以上の省エネ住宅なら、の条件になります。

一般的には△?

残念ながら、日本の住宅の90%は断熱等性能等級の現行基準を満たさない建物です。
低気密低断熱の建物は、冷房で冷たい空気を作っても高温の外気が侵入し続けます。
初動にも温度維持にも、大きな電力量が必要になります。
一般的な住宅、特に古い木造住宅など断熱気密性能の低い建物は、人がいる短時間だけエアコンを使う間欠運転が、省エネ効果は高そうです。
この点は、複数の空調関連メーカーの実験で実証されています。

日射量を減らすだけでだいぶ違う

住宅の省エネはその家のスペックに大きく左右されます。
窓は暑さの侵入口なので、風通しを保ちながら、カーテンやブラインド、屋外なら生垣や外付けブラインドで入室日射量を減らすことが有効です。
工夫を凝らして、夏を乗り切りましょう。

→column106 全館空調の理由 2023.0727

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。

完璧な断熱気密なら温度保持が容易
熱は低い方に移動する
熱は窓からやって来る
wings リビングの窓と並行する生垣
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